【フジミインコーポレーテッド】技術開発動向レポート

技術開発動向

こんにちは、喜至です。
この記事ではフジミインコーポレーテッドがどのような技術力の強化をおこなっているかを特許情報から見てみたいとおもいます。投資の参考にしていただければと思います。

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技術開発動向(マクロ)

研究開発費と特許出願数

 下図はフジミインコーポレーテッドの研究開発費と特許出願件数を年ごとにまとめたグラフになります。ちなみに特許は公開されるまでにタイムラグがあります。2019年および2020年の出願件数はまだ確定していないため参考程度に見てください。

 年ごとにばらつきはあるものの、コンスタントに50件前後の出願を行っています。研究開発費は25~35億円で右肩上がりに推移しています。売上のおよそ10%弱が研究開発に回されていることを考えると研究開発重視の企業であることが分かります。

出願分野と推移

つづいてフジミインコーポレーテッドがどの分野に特許を出願しているか、時系列もまじえてみていきましょう。この推移をみることで企業の技術開発の注力分野を予想します。下表が分野と出願年ごとの特許出願件数を表したヒートマップになります。表の見方を説明しますと、出願件数が多い年は赤いセル、少ない年は青いセルであらわされています。年ごとの変化が青→赤に変化している分野は近年、特許出願数が増加しており、研究開発が活発であることが直感的に分かります。逆に赤→青に変化している分野は特許出願数が減り、研究開発が進んでない可能性があります。長期増減率は2011年~2014年までの出願件数と2015年~2018年までの出願件数を比較した際の増減率となり、短期増減率は2015年~2016年までの出願件数と2017年~2018年までの出願件数を比較した際の増減率を表し、長期および近年の技術開発の活発度を表す指標としています。

特許出願件数として一番多いのは3C158(仕上研磨、研削)、次いで5F057(半導体の機械的研磨)とフジミインコーポレーテッドのメイン事業である半導体研磨関連の特許となります。上位2つについては増減率はあまり大きく変わらず、今後も継続して技術開発が行われていくことが予想されます。

 増減率に注目すると、同じ半導体関連でも5F157(半導体の洗浄、乾燥)や4H003(洗浄組成物)がそれぞれ長期的にも短期的にも2倍以上に出願件数が増加しています。さらに半導体関連以外では4K018(粉末冶金)が長期、短期共に2倍以上の増加が見られます。これらは近年フジミインコーポレーテッドが技術開発にリソースを多く割いている可能性が高い分野となります。それではそれぞれ個別にみてみましょう。

半導体関連事業の技術開発動向

フジミインコーポレーテッドの研磨剤

 フジミインコーポレーテッドでは半導体の基板材料となるシリコンウエハーの研磨剤を製造販売しており、世界シェアNo1を誇っています。

 シリコンウェハーはインゴット(シリコンの塊)を切り出し、研磨して表面を平坦化させた後に配線します。ウエハーに傷があればその部分は配線不良になってしまい、完成品の歩留まりが下がります。そこでラッピングと言われる研磨の最終仕上げ工程で表面荒さ(Ra)0.1nm以下まで研磨します。この研磨で使用される研磨剤を製造販売しています。

研磨剤の特許出願と権利取得状況

研磨剤を製品として扱う企業はフジミインコーポレーテッドだけではありません。他社の特許出願状況とあわせて出願年ごとの出願件数をみてみましょう。下図は研磨剤に関連する特許出願を行った出願人と出願年ごとの出願件数をバブルチャートであらわしたグラフになります。中央の数値が出願件数で、件数が多いほどバブルが大きくなります。(FI:B24B37/00H(ラップ砥粒、工作液)で集合作成)

 フジミインコーポレーテッドの特許出願推移をみてみると2011年から出願件数が未確定の2019年も含めて2桁を超える特許出願をおこなっており研究開発意欲が旺盛であることがうかがえます。シェア首位なのもうなづけますね。

 フジミインコーポレーテッドと同じくらいの出願件数である企業は日立化成(2020年、昭和電工に吸収されました)ですが2017年以降に出願件数がガクッと落ちてますね。ネタ切れ?優先度の低下でしょうか?

 その他の企業も半導体関連の研磨剤を事業として行っている会社ばかりです。中にはフジミインコーポレーテッドよりも企業規模の大きい企業もありますが、出願件数はフジミインコーポレーテッドよりも少ないですね。発明を生み出す力はフジミインコーポレーテッドが他社より高いようです。

続いて権利の取得状況を見てみましょう。

 権利保有数のNo1はフジミインコーポレーテッドです。出願件数の推移から見て、今後も権利数を増やし、他社と差をつけていくことが予想されます。余談ですが、意外だったのは権利数で花王が2位にランクインしていることです。出願数の推移もフジミインコーポレーテッドほどではないですが、かなり前から継続してまとまった件数を出願していますし、今後の動向次第で大きく化ける可能性があるかもしれませんね。

研磨剤以外の技術開発

 さらに同じ半導体関連でも急激に出願数が伸びている5F157(半導体の洗浄、乾燥)や4H003(洗浄組成物)についても見ていきましょう。下のバーグラフは5F157(半導体の洗浄、乾燥)および4H003(洗浄組成物)のテーマコードから集合を作り、さらに詳細な特許分類であるFタームを出願件数の多い順にならべたグラフになります。

 Fタームのキーワードから、ウエハ研磨後の研磨剤を洗浄する方法や洗浄液の特許であることがうかがえます。つまり、フジミインコーポレーテッドは後工程の取込みを図っていることが分かります。

研磨後の洗浄を技術開発領域にしようとしているフジミインコーポレーテッドですが、他社と比べた時に優位性はあるのでしょうか?出願状況と権利状況をみてみましょう。

 出願件数はウエハの研磨・洗浄装置を販売する荏原製作所が古くから最も多くの出願をしています。さらにディスコやインテグリスなどの半導体製造工程に関わる企業も10年以上前から開発を行っているようです。フジミインコーポレーテッドは2015年以降に出願数を伸ばしているものの、他社にくらべて後発な開発領域である可能性が高いと考えられます。

続いて権利の取得状況はどうでしょうか?

やはりこちらも荏原製作所が権利数は首位、さらにディスコ、三菱ケミカルと続きます。フジミインコーポレーテッドは現時点で保有している特許は5件のみで他社と比べた優位性は低そうです。

新規領域の技術開発動向

新規で開拓している分野はなに?

 半導体関連以外では4K018(粉末冶金)の特許出願数が長期、短期共に2倍以上の増加を見せていました。どのような技術開発を行っているのでしょうか?出願数が急激に増加した2015年以降の特許出願の要約をテキストマイニングしてみました。

 どうやら積層造形(3Dプリント)に使用するセラミック材料粉末の研究開発をしているようです。3Dプリントは2023年までに年平均20%以上で世界市場が成長すると予想されている分野です。フジミインコーポレーテッドの技術が関与するのは金属粉末を使った方式(下図のピンク)で、3番目に多い方式になります。研磨剤で培った粒子の製造技術を別の成長分野に横展開するというのはとてもいい戦略だと思います。

3Dプリンター金属粉末材料の特許出願と権利取得状況

  3Dプリンター金属粉末材料の特許出願動向を他社と合わせてみてみましょう。下のバブルチャートは4K018(粉末冶金)とB33Y70(付加製造に特別に適合した材料)の特許分類を持つ特許集合を作成し、出願人別に出願推移をまとめたものです。

 リコーやセイコーエプソンなどのプリンター大手を筆頭に、日立金属やJX金属などの金属メーカーも参戦しています。フジミインコーポレーテッドも含め、各社の参入時期や特許出願数に大きな開きはみられず、また出願件数も1桁台と少ないことから各社手探りで開発を進めている段階と考えられます。

 さらに各社の権利取得状況も見てみましょう。

 首位に日立金属、2位にリコー、3位にフジミインコーポレーテッドとつづきますが、各社1ケタ台の権利数で大きな開きがありません。まだ明確に絶対的に優位なプレイヤーがいない領域と考えられます。フジミインコーポレーテッドの躍進に期待ですね。

まとめ

今回、フジミインコーポレーテッドの特許情報を分析してみてわかったことをまとめると・・・

  • 主力事業である、半導体関連の研磨剤の研究開発はコンスタントに行われている模様。
  • 半導体関連の研磨剤の特許出願推移、権利数ともに他社を上回っており、技術的に優位な状態が続くと考えられる。
  • 半導体関連の新規な研究開発領域として、研磨後の洗浄工程(後工程)を研究開発領域に定めている動きあり。他社と比較すると後発かつ、権利数はまだ少なく、現時点で優位性があるわけではない。
  • 半導体事業以外のトピックスとしては、3Dプリンターの金属粉末材料を新規領域として研究開発を行っている。
  • 3Dプリンターの世界市場は成長局面にあり、主力の研磨剤技術の横展開先として好ましいと考えられるが、現時点で開発時期や権利数に優位性はなく、各社手探りの状態。

 フジミインコーポレーテッドは成長産業である半導体関連研磨剤の技術力や特許の保有数においてもトップであることから、これからもシェアNo1を維持していく可能性が高いと感じた。また、3Dプリンターなどのさらに先をいく成長産業に種まきをしていることも好ポイントだと感じた。主力の半導体事業で収益を上げつつ、さらなる成長事業を作っていければ企業価値の向上も期待できる。

分析は以上、となります。いかがだったでしょうか?もし記事の内容を気に入っていただけましたらTwitterで「いいね」、「フォロー」をしていただけると励みになります。

本記事は特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資をする際は自己責任で投資判断をお願いします。

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