ドコモ、KDDI、ソフトバンクの技術開発動向

技術開発動向

 本記事では、菅政権誕生で激震が走っている携帯通信キャリア大手3社の技術開発動向、各社の技術的な強みを特許出願情報から分析したみたいと思います。ちなみに各社の特許集合は、株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社で作成しています。各社の親会社やグループ会社は共同出願を除き、含まれていません(つまり日本電信電話やソフトバンクグループ等は含まない)。それでは早速みていきましょう!

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特許保有数・特許出願件数推移

まずは3社の特許保有数と特許出願件数推移を見てみましょう。

特許保有数

 下のグラフは、2020年12月時点の3社が保有する特許の件数となります。

 NTTドコモは他2社に対して多くの特許を保有しており、その量はKDDIの約1.5倍、ソフトバンクの約5倍強となります。特許の量だけで技術力の優劣を完全に語ることはできませんが、これだけの量の発明を行えるということは技術力を裏付ける事実の一つだと言えます。

3社の中ではソフトバンクが最も少ない保有件数です。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先との連携や協業、投資によって技術を調達してくる可能性も考えられますが、現時点では他社との活発な共同出願も確認できていません。ソフトバンク単体の発明を生み出す力は他の2社に比べて劣っている可能性が高そうです。

特許出願件数推移

続いて、各社の特許出願件数の推移を見てみましょう。2019年および2020年はまだ出願件数が確定していませんので、参考にとどめてください。

 ほぼ特許保有件数と同じような傾向です。NTTドコモが400~800件/年の出願を行っており、KDDIはコンスタントに400件/年前後を出願、ソフトバンクは数十件~100件程度と他2社に比べて極端に少ないように感じます。ちなみに2019年度の研究開発費は、NTTドコモが928億円、KDDIが240億円、ソフトバンクが146億円となっています。研究開発費と特許出願件数を鑑みると、KDDIが効率的に発明を創出しているように思えます。

各社の注力分野

 大手キャリアそれぞれの研究開発方針を特許分類(テーマコード)から見てみましょう。下図は横軸に出願人である大手キャリア3社、縦軸に技術分野(テーマコード)をとり、バブルの大きさとバブル内の数字は2011年1月から2020年12月現在までの特許出願件数を表しています。こういったバブルチャートを作成することでどの企業がどの分野に研究開発リソースを投入しているかを推し量る材料とすることができます。

 携帯電話の基本的な通信機能に深く関わりのある5K067(移動通信無線システム)はNTTドコモが圧倒的な出願件数を誇っています。その他にも、大容量通信や無線通信方式などの技術もNTTドコモが他2社より明らかに多い出願件数となっており基本的な無線通信技術に強みを持っているものと考えられます(青破線)。

 対して、KDDIは5L049(管理・経営・業務システム、電子商取引)を筆頭に、画像認識やセキュリティ技術、広域ネットワーク(WAN)に関する技術の出願が他2社を上回っています(オレンジ破線)。NTTドコモとKDDIの出願動向を比較してみると、NTTドコモがよりインフラ(川上)に近い技術に、KDDIがよりユーザー(川下)に近い技術に強みをもっていると考えられます。同じ通信キャリアでも持っている技術と対象が異なるんですね。

 ソフトバンクについては量的に他2社に勝っている部分はほぼなく、はっきりとした強みを見出すことはできませんでした。しかし、今回の分析はあくまで各社単体の出願動向を分析したものなので技術を外部から調達している可能性については考慮していません。ソフトバンクやNTTドコモは親会社の技術、親会社が投資している企業の技術など、今回の分析に含まれていない技術リソースをもっている可能性があることに留意する必要があります。

 

簡単ですが以上になります。今回は大手通信キャリアの特許出願からマクロ的な分析と比較をしてみました。より詳しい技術開発動向については各社の特許情報をもっとミクロに分析することで分かることがあると思います。また近いうちに詳細な分析を行いたいと思います!それではまた!

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