こんにちは、喜至です。
昨日に記事でクレームチャートのお話がでてきたので今日はその話を簡単にしたいと思います。
知的財産管理技能検定などでは出てこない、実務的な内容です。
知財の仕事をこれから始める人には参考になると思います。
(昨日紹介した本を読んだ方が詳しく書いてありますが・・・)
クレームチャートはある特許と製品、ある特許と文献等を比較できるようにした対比表の事です。
といってもなんのこっちゃって感じですよね。例を出した方が分かりやすいので・・・
例1 侵害判定
あなたの会社Xは化粧品を製造販売しています。X社のヒット商品は「化粧水」で、この化粧水は成分Aを15wt%、成分Bを5wt%、成分Cを5wt%、水を50wt%の比率に調整することで優れた保湿効果を発揮します。
ある日、会社にY社から特許権侵害の警告書が届きました。Y社の特許権のクレームは下記の通りでした。
【請求項1】
成分Aを10~20wt%、成分Bを5~15wt%含み、水を40~60wt%含むことを特徴とする化粧水。
この例題に対してX社がY社の特許を侵害しているか否かを判定するクレームチャートを作成すると下表のようになります。
特許の構成要件を分説したものを左側に、右側に侵害を判定する製品の要素をとの対比を記載して各構成要件を充足するか○・×判定を行います。
この例1の場合、X社の製品はY社特許の構成要件をすべて充足するので文言侵害となり、原則的に特許侵害となります。
ここでちょっと気になる点があると思います。「X社の製品は成分Cも含まれているんじゃなかったっけ?」
つまりこういうことですね。
X社製品には成分Cが入っているから、Y社のクレームに記載されているものとは違うのでは?特許侵害にならないのでは?
答えはNoです。
知財の知識が無い人が落ちる落とし穴です。
侵害の判定はあくまで特許を基準からみて構成要件をすべて充足しているか、で判断されます。
なのでX社の製品がY社特許の構成要件をすべて充足していれば成分Cを含んでようがDを含んでようが関係ありません。
例2 特許性の判定
では反対に、例1であげたX社の製品は新規性があるでしょうか?Y社の特許があるから特許にはならないのではないか?この疑問をクレームチャートで整理してみましょう。
なお、話を簡単にするため特許性の判定は新規性に限定してお話しています。
×:新規性なし、○:新規性あり
X社の製品の要素を左側に、Y社特許に記載されている内容を右側に記載して対比してみましょう。
Y社特許にはX社の製品の特徴であるa~dが記載されています。しかし、X社の製品にはe)成分Cについて特徴があり、Y社特許にはその記載がありません。
よってX社の製品はY社の特許に対して新規性あり(特許性あり)となります。
(進歩性については別の話ですが)
今回の例は簡単に記載しましたが、特許によってはクレームがアホみたいに長くて頭の中で整理できなくなって抜け漏れが発生することがあります。
しかし、このようにクレームチャートを用いて対比することで侵害判定や特許性の判定を漏れなくチェックすることができます。
他人に説明するときもこのように一目で特許や製品との関係がわかるように整理されていると説明もしやすいですし、理解もしやすいです。
また、クレームチャートの書き方は上記に限定されるものではありませんので、シチュエーションによって項目を追加したりして工夫することが大事です。
参考になれば幸いです。
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