特許権侵害ってどんなケース?(文言侵害、間接侵害、均等侵害)

知財スキル
お疲れ様です。喜至です。

 

これまでの記事で何回か特許権の侵害についてをテーマにしてきましたが、そもそも特許権を侵害するってどういうことなのか、どんなことしたら侵害になるのかをお話していませんでした。

 

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ということで本日は特許権侵害の類型について解説していきたいと思います。

 

特許権の侵害は3つに分類される

特許権侵害の代表的なケースとして、

 ①文言侵害
 ②間接侵害
 ③均等侵害
の3つが挙げられます。
文言侵害は請求項に記載の構成要件をすべて充足した状態で発明を実施すること。
間接侵害は請求項に記載の構成要件の一部を充足した実施によって、特許権侵害の予備的行為を行うこと。
均等侵害は請求項に記載の構成要件を均等物(性質が近しい物)に置き換える事で実質的に発明を実施していると判断される侵害です。

 

それぞれについて事例を踏まえながら見ていきます。

①文言(直接)侵害

文言侵害(直接侵害とも言う)とは構成要件をすべて充足した状態で発明を実施することで他人の特許権を侵害することです。請求項の文言通りに侵害するので文言侵害、最もシンプルなケースですね。

 

構成要件をすべて充足した状態とは、過去の記事でも紹介しましたがもう一度おさらいしてみましょう。

 

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X社が化粧水を製造販売していて、Y社が化粧水に関する特許権を持っていた場合を想定してみます。

 

Y社の特許は成分A、B、水をそれぞれ特定の組成で構成されている化粧水です。

 

それに対して、X社が製造販売している化粧水は成分Aが15wt%、Bが5wt%、水が50wt%の比率で含まれています。

 

Y社の特許、X社の化粧水の関係をクレームチャートにして対比してみたのが下表になります。

 

無題1

X社の化粧水はY社の特許の構成要件すべてを充足(○)していることが分かります。これが文言侵害です。

Y社の特許が無効である場合やX社に先使用権がある場合などを除けば、X社はY社に対して特許権を侵害していることになります。これは事業として行っている限り、反復継続性などは問われません。

 

X社が特許権侵害をせずに化粧水を販売するには、Y社特許の構成要件を欠く化粧水にする必要があります。構成要件をすべて充足しないと特許権侵害にはならないからです(権利一体の原則)。
具体的には成分A、B、水のどれかを使用しないか、組成を構成要件の範囲外(例えば成分Aを5%にするなど)とするしかありません。

それで化粧水としての特性が発揮できなかったりする場合はライセンスするか(相手がライセンスしてくれればですが・・・)ですね。


②間接侵害

間接侵害は構成要件の一部を充足した実施によって、特許権侵害の予備的行為を行うことです。

 

先程の文言侵害では構成要件をすべて充足することが必要と書きましたが、これがX社だけでなく、Z社を加えた2社で実施した場合を想定してみましょう。

 

X社はZ社から成分Aを仕入れ、成分B、水と混合することで化粧水を製造しています。Y社は成分AをX社に販売することが特許権侵害の予備的行為だとしてZ社に特許権侵害の警告状を送りました。
間接侵害クレームチャート

Z社が行っている行為はY社特許の構成要件を全く充足していません。

それでも特許権の侵害となってしまうケースがあります。

 

1)成分Aが専用品の場合
専用品とは、成分AがY社特許の化粧水を製造する場合にしか用いられることがなく、他の用途がないものであるということです。
Y社特許の化粧水を製造する他に用途がないのですから、「成分Aを販売する=Y社の特許を侵害する」になるわけです。
しかし、成分Aに他の用途がある場合は専用品となりませんので、2)の要件を確認する必要があります。

 

2)成分Aが非専用品の場合
成分AがY社特許の化粧水の製造に用いる物(一般に流通してる物を除く)であって、Y社特許で挙げられている課題解決(発明としての効果)に不可欠なものであること。かつZ社がX社に販売することでY社特許の化粧水になることを知っていた場合は間接侵害となります。
しかし、Z社がX社の化粧水の成分を知らず、ひいてはY社特許の化粧品が製造に使用されていることを知らなかった場合は間接侵害とはなりません。また、成分A

③均等侵害

均等侵害は請求項に記載の構成要件を均等物(性質が近しい物)に置き換える事で実質的に発明を実施していると判断される侵害です。つまり、対象製品が請求項に記載されている構成要件を全部は充足していなくても、その含まなかった構成要件が微々たるもので、対象製品が特許製品と同等のものができてしまうと特許権者が特許出願するモチベーションが下がる(発明が開示されなくなる懸念が増す)ため、規定された侵害態様です。

 

下記の5つの要件にすべて当てはまる場合、均等侵害が成立します。1つでも当てはまらない場合は成立しません。

 

1)非本質性
相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと
2)置換可能性
その相違部分をその製品におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同じ作用効果を奏すること
3)置換容易性
その製品の製造時点において、当業者がそのような置き換えを容易に想到できたものであること
4)対象製品の非公知性、非容易性
その製品が、特許発明の特許出願時点における公知技術と同一ではなく、また当業者がその公知技術から出願時に容易に推考できたものではないこと
5)意識的除外の不存在
その製品が発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もないこと

 

なげぇ、なげーよ(’A`|||)
もう少しなので頑張っていきましょう笑

 

例えば、①文言侵害のケースでX社が「うちの製品では水じゃなくて、超純水を使っているから構成要件cを充足しない!」と反論したとしましょう。クレームチャートで整理すると下表ですね。

 

均等侵害クレームチャート
まずは1)について、化粧水の保湿効果は成分A、Bと成分の組成によって決まるのであれば水が超純水かどうかは関係ありません。よって1)を満たすことになります。
次は構成要件cを水ではなく超純水にすることで何が変わるのか?について考えてみましょうか。Y社特許の提供するものが「保湿性の高い化粧品」である場合、構成要件cを超純水に変えても(置換しても)同じ保湿性が得られるのであれば2)を満たすことになります。
3)については「製造時点において」と書いてあるので現代では超純水は理系の人間ならだれでも知っているでしょう。よって3)も要件を満たす。
4)「出願時点における」とあるので、X社の製品が特許出願時の公知技術ではできないものであれば当てはまります。逆に「Y社の出願時点」における公知技術と同一なものと言える場合、公知技術がY社特許の権利範囲に含まれるのはおかしなことなので均等侵害は成立しません。
5)これはY社特許の明細書や審査過程で「超純水は除く」という主張がない限り、要件を満たすことになります。
よってX社の製品は均等侵害である可能性が限りなく高いですね。
以上となります。思ったよりも長編になってしまいました。

 

侵害判断の手順としてはこの記事の上から順に当てはまるかを検討していただければ大丈夫かと思います。ですが、実務では構成要件の充足性や均等、間接侵害の判断に迷うことが多々あります。判断に迷う場合は独断で判断せず弁理士などの専門家に必ず確認を行いましょう。

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