【2021年版】1級 知的財産管理技能検定(特許)の学科試験出題傾向と対策・勉強方法

知的財産管理技能検定

この記事では私が実際に2012年から2020年、計9回分の過去問を解いて、単元の分類を行い、単元の出題数と出題割合を算出しました。勉強のスケジュールや優先順位を決めるのに参考になれば幸いです。また、実際に1級知的財産管理技能士(特許)である私が合格した時の勉強方法などもお伝えしていきます。

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学科試験の出題傾向

2012年から2020年に行われた、計9回の学科試験の出題データ(単元ごとの出題数、出題割合)をまとめました。

単元ごとの出題件数
単元ごとの出題割合

知的財産管理技能検定1級の学科試験は制限時間100分で45問の問題を解きます。採点基準は公開されていませんが正解率80%(36問)が合格ラインと言われています。

出題割合が最も高いのは特許法(日本)です。日本の技能検定なので当たり前ですね。
次に割合が高いのは米国特許法です。毎年6問以上は必ず出題されています。これは日本から米国へ出願するケースが多いからでしょうか。
3番目は知的財産戦略です。企業の知財部で業務をしている方なら、セオリーを理解していたり、なじみがあるかもしれませんが実務に携わっていないと感覚がわからない部分ですね。
この3科目については出題範囲も広く、出題割合も高いため、多くのリソースを割く必要があります。

上位3科目以外は一桁代の出題割合であるものの、上位3科目の合計は約53%しかなく、3科目をすべて正解したとしても合格ラインには届きません。また、契約、価値評価や関税法、パリ条約やPCT関係の問題は出題数こそ少ないものの、毎年必ず出題されています。確実に出題される科目は当然対策をする必要があります。

他の科目についても出題されない年がありますが、出題される時は2~3問程度がまとめて出題されます。誤解答が9問までしかできないと考えるとこちらも決して捨てることはできません。

このように知的財産管理技能検定1級は出題割合に多少の偏りはあるものの、出題範囲は広く薄く、満遍なく出題されており非常に対策がしづらいのが特徴です。合格には優先順位と勉強にかかる時間を勘案してスケジュールを立てる必要があります。

単元ごとの対策・勉強方法と注意点

各単元の対策の要点・勉強方法についてお伝えします。勉強に必要な資料等は下記記事にまとめてありますので合わせてご覧ください。

特許法

特許法について解説した弁理士試験用の参考書を購入した方がいいでしょう。弁理士試験用の参考書であれば網羅性が高いですし(お値段も高いですが・・・)、実務でも役に立ちます。法改正によって内容が変わっている単元もありますので、参考書はなるべく出版年が新しい物を購入した方がいいです。知的財産管理技能検定は実施年の5月までの情報で構成されるため、該当する期間に法改正があった部分は出題される可能性が高いのでよく勉強しておきましょう。効率を求めると穴ができるため、最低でも過去問にでてきた単元は丸ごと勉強するようにした方がいいと思います。

米国特許法

こちらも特許法と同様に条文を解説した参考書を購入して勉強する必要があります。ネットでは網羅的に解説しているサイトなどは見当たりませんし、参考書にひとつの情報が集約されていた方が情報を検索する手間が省けます。ネットの検索は参考書に載っていない事項や判例を探すなどの補助的な使い方をしたほうがいいと思います。索引に単語や条文が載っている参考書ですと必要な情報を検索しやすいので購入の際は注意してみてください。

知的財産戦略

 これは特許庁が発行している「戦略的な知的財産管理に向けて–技術経営力を高めるために–<知財戦略事例集>」をダウンロードして精読することをお勧めします。問題はこの資料から抜粋されて作成されるケースが多いからです。問題文や選択肢に使われる単語もこの資料に準拠した単語が使用されるので本番でも迷うことがありません。しかし、これだけでは対策として不十分です。下表は各年の試験で出題された省庁資料の一覧になります。

 この表を見ると、戦略的な知的財産管理に向けてがコンスタントに出題されつつ、試験実施年の5月から2年以内に経済産業省や特許庁などから発行された資料を基に出題されていることがわかります。よってこれらの資料の内容も頭に入れておく必要があります。

審査基準

こちらも特許庁から「特許・実用新案審査基準」が発行されていますのでこちらを参照することをお勧めします。理由は同上です。特に各要件の解説に例示されている内容をチェックしておきましょう。

特許情報・調査

主な出題事項はFIやFターム、CPCなどの特許分類がどのような特徴、特性をもった分類かを選択する問題や、先行技術調査、パテントクリアランス調査のセオリー(調査範囲など)について問う問題です。特許調査について基本的な事項が網羅、解説されている参考書があれば足りると思います。

契約、民法、独占禁止法

過去問を見てもらえば分かりますが、問題中で秘密保持契約書や共同出願などの契約文書が提示され、その条文の適否を出題される形式が多いです。契約文書をよく読めば常識の範囲内で解ける問題もあれば、民法、不正競争防止法や独占禁止法を知っておかなければ分からない問題も出題されます。民法、不正競争防止法や独占禁止法については知的財産管理技能検定2級程度の知識は最低限補充しておく必要があります。

民事訴訟法

特許権侵害訴訟などに関わる訴訟の手続きについて出題されます。訴訟始まりから終わりまでの流れや弁論主義、裁判管轄の扱いについて最低限、勉強しておく必要があります。

関税法

1問だけですが毎年必ず出題されます。出題されるのは知的財産を侵害している物品の輸出入の差し止め手続きの流れが中心です。こちらは専門の書籍を見てもいいですが、税関のホームページで「知的財産侵害物品の取締り」の項目を見てもらえば必要十分な内容が載っています。

中国特許法、欧州特許法

中国特許法は必ずではないですがそれなりに高い頻度で1問のみ出題されています。あまり深い内容は出題されていない印象です。PCT出願から中国への国移行時の注意点(マルチクレーム、審査請求時期など)を重点的に学習しておけばいいと思います。
欧州特許法は2018年に1問だけ出題されました。国移行に関する出題でしたが、他にデータがないので傾向はわかりません。リソースを大きくかける必要はないでしょう。

パリ条約、PCT

各単元ごとに1~3問程度、毎年必ず出題されています。2つの科目は合わせると出題割合が約10%となります。特許庁に説明資料などがありますが、実務上もよく参照しますので特許法と同様に参考書を購入して勉強した方が確実です。あまりヤマをはることなく、網羅的に勉強しましょう。

弁理士法

関税法と同様、1問だけですが毎年必ず出題されます。特許法のように網羅的に理解する必要はなく、弁理士ができる業務とできない業務について理解できれば十分です。日本弁理士会のHPに記載がありますが、書籍にも目を通しておく方がベターです。

価値評価

関税法や弁理士法と同様、1問だけですが毎年必ず出題されます。主に知的財産を買い取ったり、ライセンス、担保にする時の値段、価値の評価手法(インカムアプローチやコストアプローチなど)について出題されます。特許庁の「知的財産の価値評価について」という資料に手法について詳しく解説されています。専門の書籍もありますのでそちらを参照してもいいでしょう。

資金調達

知的財産を担保にした融資や信託について出題されます。それほど出題頻度も出題数も少ないので浅くインプットしておけばいいと思います。

特許行政年次報告書

毎年出題されるわけではありませんが、出題される時は2、3問程度出題されますので無視できません。出題は特許庁の資料である「特許行政年次報告書」から出題されます。知的財産管理技能検定は実施年の5月までの情報で構成されるため、特許行政年次報告書の発行日に注意してください。今年分の報告書が発行されていなければ去年の報告書から出題されます。また、ほとんどの年度で行政年次報告書の第1章(特許)から出題されていますので、最低でもここは読んでおく必要があります。出題内容は下表のとおり、日本国内の出願件数の推移に対する考察や外国出願の出願件数推移に関する内容が出題されます。

特許行政年次報告書の出題内容

合格した勉強方法

私が合格した時の勉強方法です。とにかく暗記、暗記、暗記&暗記。暗記をどれだけ効率よくできるかを考えてこの方法にたどり着きました。

過去問から出題内容を抽出

できるかぎり多くの過去問を入手して、参考書を見ながら一問ずつ解きながら参考書にマーカーを引いていきます。この時、過去問に出てきた範囲だけでなく、該当する単元を丸っとマーカーを引いておきましょう。例えば、新規性喪失の例外期間が過去問にでてきたなら新規性喪失の例外を適用するための要件なども一緒に抑えておきます。私の場合は5年分の過去問で行いました。過去問は直近の試験であれば知的財産管理技能検定のHPから入手できます。それ以外の方法ですと、知的財産管理技能士会に入会するか、アップロード社の過去問題集(こちらは解説もあります)を購入するかですね。前者は年会費が1万円ほど、後者は1回分の過去問が4000円弱しますが・・・。

フラッシュカードの作成

暗記するための非常に古典的な手法です。最初の手順でマーキングした参考書の単元を復習しながらフラッシュカードを作成します。自分で問題文と解答を考えることでさらに内容が頭に定着します。私の場合はさらに問題文と解答の音声を自作して車の中で聞くようにしました。車通勤の方や電車通勤中にフラッシュカードが見れない方は音声での学習も取り入れることを検討してください。

ひたすら暗記&暗記

作成したフラッシュカード(または音声)をつかってひたすら暗記します。私の場合は音声を併用してましたので下記のようなルーチンで学習してました。

まず最初に自宅で単元の予習を行います。これは自分で作成したフラッシュカードの問題を解いていき、間違えた問題をひたすらA4ノートに書いて覚えこませます。次に通勤の行と帰りで予習した単元の音声を聞いて復習します。復習で間違えた問題は後でわかるようにチェックしておきましょう。ルーティンの最後は復習で間違えた問題をひたすらA4ノートに書き込み体と頭に覚えこませます。それが終わったら次の単元の予習をしましょう。これでルーティン1周です。このルーティンを何回もぐるぐると回し続ければ、問題文を読んだ(聴いた)瞬間に解答が頭に浮かぶようになります。この状態まで持ってくることが重要です。私はA4ノート3冊が埋まりました。実際の試験では4つの選択肢から適切/不適切な選択肢を選ぶ作業になるわけですが、必ず考え込まされる問題や選択肢がいくつもでてきます。勉強した内容を瞬時に引き出して選択肢から除外/選択する能力がないと、見直しどころかあっという間に時間切れでOUTです。広範な知識とそれを引き出す瞬発力が合格のカギであることを念頭に置いて学習してください。たぶん過去問を制限時間つきで実施すれば自ずとわかると思いますが・・・。

最後に

時間がなくてフラッシュカード作成や音声作成する手間が惜しい人は下記記事にて私が作成したフラッシュカードの中身を問題集として販売していいますので購入を検討してみてください。AmazonのKindle版を使えばテキスト読み上げ機能を活用して音声学習もできますし、紙媒体が良ければBASEに印刷用PDFデータ(印刷と製本は自分でしてください)があります。

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