【FUJI】技術開発動向レポート

技術開発動向

こんにちは、喜至です。
この記事ではFUJIがどのような技術力の強化をおこなっているかを特許情報から見てみたいとおもいます。投資の参考にしていただければと思います。ファンダメンタルについては下記記事で分析してますのであわせてご覧ください。

技術開発動向(マクロ)

研究開発費と特許出願件数

 下図はFUJIの研究開発費と特許出願件数を年ごとにまとめたグラフになります。ちなみに特許は公開されるまでにタイムラグがあります。2019年および2020年の出願件数はまだ確定していないため参考として見てください。

 最低でも200件以上の出願をしていますね、2016年までは右肩上がりに増加していますが、2017年および2018年は急減しています。研究開発費は60~90億円で右肩上がりに推移しています。こうして見ると2017年と2018年の特許出願件数が研究開発費と反比例しているのはちょっと気になりますね。開発が成果に結びついていないのか?新しい技術分野に注力しててまだ成果がでてないのか?気になるところです。

出願分野と推移

 つづいてFUJIがどの分野に特許を出願しているか、時系列もまじえてみていきましょう。この推移をみることで企業の技術開発の注力分野を予想します。下表が分野と出願年ごとの特許出願件数を表したヒートマップになります。表の見方を説明しますと、出願件数が多い年は赤いセル、少ない年は青いセルであらわされています。年ごとの変化が青→赤に変化している分野は近年、特許出願数が増加しており、研究開発が活発であることが直感的に分かります。逆に赤→青に変化している分野は特許出願数が減り、研究開発が進んでない可能性があります。長期増減率は2011年~2014年までの出願件数と2015年~2018年までの出願件数を比較した際の増減率となり、短期増減率は2015年~2016年までの出願件数と2017年~2018年までの出願件数を比較した際の増減率を表し、長期および近年の技術開発の活発度を表す指標としています。

 まず、圧倒的に出願件数が多い5E353(電気部品の供給・取付)ですが、これは主力製品である表面実装機を主にカバーする特許出願になります。ほぼこの分野に特化してますね。2018年に出願件数が減っていますが、長期的には増加傾向にあり、継続して開発成果を積み上げることができていることは製品競争力強化の点で良いと思います。

 次に出願件数が多いのは3C707(マニプレータ)です。増減率も長期的で2倍弱の増加をみせており、リソースを割いている分野であると考えられます。どのような用途、技術なのかを後で詳しく見てみたいのですが、今回の記事ボリュームが大きいため省略します(ごめんなさい)。

 増減率に着目すると、2G084(プラズマ技術)、5L049(管理・経営・業務システム)、4C040(病弱者のベッド)も長期で150%以上の増加を見せています。それぞれ、2G084は基板や金属部品に防水などの表面処理をする前に不純物を除去するプラズマユニット、5L049はパプリックストッカ(荷物の受け渡しロッカー)システム、4C040は介護現場で使用するサポートロボットに関するものです。出願規模はまだ小さいですが表面実装機以外の技術開発も推進しているようですね。

 逆にFUJIの第2の柱であるマシンツール事業をカバーする3C045(旋削加工)については、出願の規模も小さく、長期的にも短期的にも減少傾向にあります。こちらはあまり研究開発リソースが割かれていないのか?開発成果があがらないのか?どちらかは分かりませんが、多くの工作機械メーカーがあるなかで、技術的に優位な状況ではなさそうです。

 そのほかには5F131(ウエハ等の容器,移送,固着,位置決め等)、5F047(ダイボンディング)の半導体製造に関する特許出願が2011~2014年まではある程度出願されていましたが、2015年以降は少なくなり、2018年には0になっています。おそらくFUJIは半導体製造装置まで事業領域を拡大することを10年以上前から狙っていたが、自社リソースだけで技術を確立することが困難だったため、ファスフォードテクノロジの買収に踏み切ったと考えられます。どういった技術が肝になっているのかは後で考察します。

表面実装機の技術開発動向

競合と比較した特許出願状況

 FUJIの売上の大部分を占める表面実装機ですが、電子部品の実装機を製品として扱う企業はFUJIだけではありません。他社の特許出願状況とあわせて出願年ごとの出願件数をみてみましょう。下図は電気部品の実装機に関連する特許出願を行った出願人と出願年ごとの出願件数をバブルチャートであらわしたグラフになります。中央の数値が出願件数で、件数が多いほどバブルが大きくなります。(FI:H05K13(電気部品の組立体の製造または調整に特に適した装置)とテーマコード:5E353(電気部品の共有・取付)で集合作成)

 FUJIの特許出願推移をみてみると2011年から出願件数が2桁を超える特許出願をおこなっており研究開発意欲が旺盛であることがうかがえます。他社で規模が大きい出願をしているのはJUKIや、ヤマハ発動機、パナソニックとなります。FUJIを含めた前記4社は電子部品の表面実装機のシェア4強になりますので妥当な結果といえそうです。その中でもFUJIの出願件数は会社としての規模がFUJIよりも大きいパナソニックやヤマハ発動機を凌駕しています。

競合と比較した権利取得状況

 続いて権利の取得状況をみてみましょう。下図は2021年3月21日時点での各社の特許保有件数をパイチャートであらわした図になります。(検索式は前記同様)

 現時点で権利保有数のNo1はFUJIです。出願件数の推移から見て、今後も権利数を増やし、他社と差をつけていくことが予想されます。

他社への影響力比較

 特許出願件数、特許保有件数ともに他社に勝っているFUJIですが、他社への影響力はどうなのでしょうか?特許の出願数や保有数は技術力やノウハウの裏付けになる要素のひとつだと思いますが、他社への牽制力が欠けた特許ではあまり意味がありません。「質」のともなった特許であるかどうかを被引用回数から考えてみます。被引用回数とはわかりやすく言えば、ある特許が別の特許出願が特許化されるのを妨害した数です。つまり被引用回数が多い特許は多くの他者特許出願に影響を及ぼしている特許だということが客観的に分かります。下のグラフは横軸に特許の保有件数、縦軸に特許1件あたりの被引用回数、バブルの大きさと数字は保有特許全体の被引用回数となります。つまり縦軸で1件当たりの特許の質を、バブルの大きさで保有特許全体の質を表しています。ちなみに特許も被引用回数も日本に限定した数値となっています。

 電子部品の表面実装機メーカー4強で比較すると、FUJIは最も多くの特許を保有していますが、1件あたりの被引用回数は最も小さく、保有特許全体での被引用回数も3番手であることが分かります。保有特許全体で被引用回数が最も多いのは保有件数が2位のパナソニックで、1件当たりの被引用回数が高いのは保有特許件数が低いJUKIでした。あくまで被引用回数による分析は他社への影響力をみる一つの指標であり、これらの結果だけで断定はできませんが、FUJIは特許の出願数や保有件数の割に他社への影響力は限定的な可能性があります。

ファスフォードテクノロジ買収の技術的な観点

 まずはファスフォードテクノロジの権利取得状況から、どんな技術をもった企業なのかを見てみましょう。

 取得している特許に付与されているテーマコードをみてみると、4割強が5F047(ダイボンディング)、1割程度が5F131(ウエハ等の容器,移送,固着,位置決め等)の半導体製造に関する特許が大部分を占めていることが分かります。ダイボンディングとは下図のようにウエハから切り出した半導体素子(ダイ)を支持体に固定する工程です。詳しくはFUJIのファンダメンタル分析記事をご覧ください

ファスフォードテクノロジHPより引用

 この2つのテーマコードはFUJIの特許出願動向をみていた時に挙がったテーマコードでしたね。これだけでもFUJIが手に入れたかった技術と大まかに一致していることがわかります。

 もう少し詳細に見ていきましょう。下図はファスフォードテクノロジとFUJIの特許のFタームを比較したコンパラマップ、決算資料に記載の技術シナジーの図になります。

FUJI決算資料より引用

 コンパラマップをみた印象として、FUJIとファスフォードテクノロジのダイボンダ技術はとても似通っていることが分かります。買収の目的は、両社の異なる技術を掛け合わせて幅を広げるというよりは、技術の深堀が目的だったのではないかと考えられます。どういった技術を組み入れ、どういった製品を生み出したいのでしょうか?

 注目すべきはダイを載せる支持体です。ダイを乗せる支持体について、FUJIは上記のダイボンディングの工程図のようにリードフレームなどの支持体にダイをボンディングする技術ではなく、直接プリント基板にダイをボンディングする技術を追求していたことがわかります。そしてその技術はファスフォードテクノロジが多くの技術を有していることが保有権利数からわかります。この技術はフリップチップマウント(実装)という技術です。下図のようにリードフレームとワイヤを省き、ベアチップを直接プリント基板に実装することで大幅な省スペース化を実現します。つまり現在のFUJIの主力製品である電子部品の表面実装機にフリップチップ実装機能をもったラインナップを設けるのが狙いだと考えられます。そのために薄く脆いダイをピックアップする技術(ウエハエキスパンド、吸着)やマウント精度、加熱接合などの技術をもったファスフォードテクノロジを買収するのが自社開発より効率よく実現すると踏んだのでしょう(あくまで私の予想ですが・・・)。軽薄短小、高密度化が進む最先端の基板やモジュール部品の生産に必要な実装技術になるのではないでしょうか。

TDK ホームページより引用

まとめ

今回、FUJIの特許情報を分析してみてわかったことをまとめると・・・

  • 主力の電子部品表面実装機はFUJIが最も開発に力を入れている製品であり、その成果として特許出願件数は長期的に増加傾向にあり、他社とくらべて出願規模も大きい。
  • 表面実装機の保有特許は最も多く保有しているし、出願件数の推移からして今後も他社に差をつけていくと考えられる。しかし一方で、現時点の保有特許は他社への影響力が大きいとは言えず、保有件数の差を他社に対する優位性として捉えていいか疑問が残る。
  • 表面実装機以外の分野ではパブリックロッカーや介護ロボットなどの技術開発も行っている形跡が見られたが、表面実装機に比べると注力度はまだ大きくないと考えられる。
  • 第二の柱であるマシンツール事業に関する特許出願は減少傾向にあり、開発の注力度は低いことがうかがえ、長期的に技術的優位をもつことはなさそう。
  • ファスフォードテクノロジ買収はFUJIがかねてより手に入れたかったダイのピックアップやマウント技術をファスフォードテクノロジがしっかり保有していることがわかり、納得感が得られた。電子部品の小型化や高密度化が進む中でフリップチップを含めたこれらの技術はFUJIの製品価値向上に寄与する可能性が高いと考えられる。

 

 FUJIの技術開発動向の分析は以上となります。技術開発も旺盛に行っていますし、次世代技術への手も打っていて個人的には好印象です。ファンダメンタル面、技術開発面ともに優秀な会社ですね。割安になったら積極的に買っていきたい銘柄です。本当は産業用ロボットの業界分析で調べたロボット業界特有の課題と結び付けたかったのですが、すでにロボットの導入がすすんでいる電子部品分野だったことやFUJIの業績に大きな影響を与えそうな要素(ファスフォードテクノロジ買収)が他にあったため今回は割愛しました。もし記事の内容を気に入っていただけましたらTwitterで「いいね」、「フォロー」をしていただけると励みになります。

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