こんにちは喜至です。今日は投資ネタではなく久しぶりに知財スキルに関する記事を書いてみます。内容は論文情報から企業の注力分野を無料ツールを使って分析する方法です。きっかけは学術文献に特許分類IPCを付与するJDreamⅢの機能を利用して特許情報よりも先行した技術トレンド、ニーズの把握ができないか試してみたかったことです。本業でJDreamⅢの利用を上申してみたところ却下(-_-;) ならば無料のツールでなにかできないかと考えてみたところなんとか形になったのでメモもかねて記事にしました。トヨタ自動車を例にご紹介したいと思います。
論文情報の収集方法(J-GLOBAL)
論文情報の収集にはJ-GLOBALを使用します。特に難しいことはなく、サイトにアクセスして検索ボックスに「トヨタ自動車」と入力して、フィルタで「トヨタ自動車」を選択し、「文献」のタブをクリックすれば該当する論文がでてきます。現時点では13,150件がヒットしました。
そして表示順を「発行年の新しい順」にし、「スクロールで自動読み込みON」にすれば、あとは分析したい発行年の論文まで下にスクロールしていきます。スクロールが終わったら、下の写真の通り、最下段にある「検索結果のダウンロード」の項目で「Bib Tex」をクリックしてデータをダウンロードします。これで収集は完了です。
論文データの変換と前処理
次のステップとしてダウンロードしたファイルをテキストデータに変換します。といってもそんな大げさな操作はなく、Google Scholarにアクセスして検索ボックスにダウンロードしたbibファイルをドラッグ&ドロップするだけです。
そして出力される結果がこちら
これを「Ctrl+A」で全選択してコピーし、Excelにテキストとして貼り付けを行います。
これで準備が整いました。ここから分析前の前処理を行います。今回使用するデータは「title」と「year(発行年月日)」、「journal」です。関数を使って抜き出すか、区切り位置の機能を使って処理を行います(詳細は割愛)。前処理後の結果がこちら。
論文情報の分析
ようやく準備が整いましたので分析をしてみます。いつもの特許情報分析では特許分類がありましたが、今回はありませんのでジャーナルを分類替わりにしてみました。
ジャーナルの名寄せを行っていないので一部重複していると思いますが、ジャーナルの名前からどういった分野に論文を出しているか(研究投資しているか)がわかります。自社公報(toyota technical review)や自動車技術会への投稿は当たり前として、電池討論会や日本金属学会などの材料工学分野、ロボット分野でも論文投稿や学術講演をおこなっています。トヨタ自動車の論分投稿数が減少傾向にある中で長期的にも短期的にも増加率が高いジャーナルは応用物理学会、軽金属学会です。どういった技術や金属が研究対象となっているかは、前処理後のデータをジャーナル名でフィルタリングしてタイトルをテキストマイニングすれば概要がわがりそうですね。軽金属のジャーナル(分類)でやってみた結果が以下です。(ユーザーローカルの無料テキストマイニングサービスを利用)
トヨタ自動車が近年研究対象としている軽金属はアルミニウムをメイン組成とした合金で、課題はダイカストにおける気孔(ポーラス)発生や時効(硬度の継時変化)ということが推察できます。特許情報もあわせて調査することでこの課題がトヨタ自動車のニーズの先読みとなりえているか別途検証してみる価値がありそうですね。さらに詳細な情報を得たいなら論文を個別に査読する必要があると思いますが、いったんここまでにします。
まとめ
無料のツールだけを用いてトヨタ自動車の各分野における論文投稿数の推移を可視化することができました。論文のタイトルは特許のタイトルよりも研究内容を詳細に説明しているためテキストマイニングによる概要の推察もやりやすいように思えました。今回はジャーナル名を分類替わりにしましたが、調査目的のキーワードを独自分類として扱うのもありかなと思いました。さらに論文の要約データをあわせて手軽にダウンロードできればもっと詳細な分析ができそうですね(誰か知ってたら教えてください)。以上になります。
もし記事の内容を気に入っていただけましたらTwitterで「いいね」、「フォロー」をしていただけると励みになります。
コメント