【知財スキル】特許検索の基本

知財スキル
こんにちは、喜至です。
過去に下記の記事で特許情報分析についてお話ししました。
ただ、本業ではその前段階である検索式の作成方法について質問をいただくことが多かったので記事にしてみたいと思います。




 

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特許検索の大まかな流れ

大まかな流れを図にしてみました。

 

特許検索

①調査目的の決定

 調査する目的によって欲しい母集団が変わり、作成する検索式は変わります。先行技術や無効資料の調査では精度の高い、ノイズの少ない母集団が欲しいのに対して、クリアランス調査ではある程度のノイズを許容して、漏れの少ない母集団が必要となります。

 

②キーワードを使った予備検索
 通常、特許の検索は特許分類を使うほうが効率的に目的の特許を抽出できます。ですが、どの分類で検索すればいいのか?初めて検索する分野ですとわからないことが多いです。そこで、発明の名称や請求項、要約に使われているキーワードを使って目的に近い公報を探します。

 

③近しい公報の発見、特許分類の選択
 キーワード検索で作成した母集団の公報を査読して、目的に近い公報を探します。公報が見つかったら、公報に付与されている特許分類(FIやFターム)を一つ一つ確認して効率的な検索に役立つ分類を抽出します。

 

④検索式完成
 ③で抽出した特許分類を検索式に組み込んで検索式完成です。思ったような集合を作れてないな、と思ったら②からキーワードを選び直してやり直します。



 

特許検索実践

 ①の調査目的ですが、例として「繊維強化樹脂」で製作された「タンク」の「強度」に関する先行技術調査としましょう。

 ②キーワードを使った予備検索ですが、下の画像のとおりに検索してみます。
特許検索2
請求の範囲に「繊維 強化 樹脂」としました。要約には「タンク」と「強度」を入れています。「繊維 強化 樹脂」という単語は物の構成ですので請求項に、「タンク」を要約にしたのはそんなに深い意味はありません。請求項に入れてもいいと思います。ただ、「強度」については効果ですので通常、請求項に記入しないため要約から検索する必要があります。このように構成や用途、効果をキーワードとして選びつつ、適した検索項目にあてはめます。

 

検索結果としては497件が抽出されました。これを全部見る必要はありません。発明の名称や図面を見ながらそれっぽい公報をさがします。そして下に示す公報が見つかりました。
特許検索3
公報の内容を見てみると、繊維強化樹脂に硬化阻害剤を加えて引っ張り強度の低下を防ぐ高圧タンクの製造方法のようです。①で定めた目的に合致する公報だと思います。それでは特許分類を見てみましょう。公報中段の右側に「Fターム(参考)」が記載されています。これをJ-PlatPatの「特許・実用新案分類照会(PMGS)」で内容を確認します。
特許検索4
テーマコード「3J046]が圧力容器の分類、その下が特許の目的(効果)や材質の分類となてっています。①の調査目的とマッチするのは3J046AA01(機械的強度の向上)と3J046CA04(繊維強化プラスチック)となります。この二つのFタームで用途、構成、効果を検索式で限定できます。

 

④検索式完成
 それでは②で検索式を立てたように、今度は検索項目をFタームにして3J046AA01(機械的強度の向上)と3J046CA04(繊維強化プラスチック)の論理和をつくります(画像は省略)。すると、検索結果は497件→243件まで減りました。より調査目的に合致した集合になっているものと思われます。集合が目的に合致しているか否かは、私のj感覚では10件中7~8件が合致してればいいかな?といった感じです(完璧な答え合わせの方法はないので・・・)。ほかにも出願人のランキングマップを作成して市場情報(シェア等)と照らし合わせてみる事も重要です。思ったような集合ができていないと思ったら、キーワードや分類を単独で検索してみて、どこがノイズの発生源になっているか確認してみましょう。一発でいい検索式が作成できることはあまりありません。試行錯誤を繰り返して納得のいく検索式を作成してください。

 

※注意点※
特許検索を行う際に、ノイズの数(精度)と抜け漏れの数(網羅性)はトレードオフの関係にあることを覚えておいてください。網羅性を追求するとノイズが増えますし、精度を追求すると網羅性はかならず低下します。調査目的に応じてバランス感覚を身につけていくことが大事です。
すごく簡単な説明になりますが以上です。仕事で特許を扱う研究開発職の人はこの程度の検索能力があれば十分に業務に活かせると思います。

技術者・研究者のための特許検索データベース活用術

ちなみに、書籍としては、
 


 
が参考になると思います。技術者・研究者向けのため、内容がやさしく、かつ最低限必要な知識、ノウハウが詰め込まれています。おススメです。逆に特許を本業にしている人には物足りないかもしれません。
 
 
参考になれば幸いです。

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