産業用ロボットの業界分析

銘柄分析

 下記記事で2025年を見据えた有望産業の絞り込みを行いました。その中のひとつとして、産業用途で使用されるロボットの業界分析をしていきたいと思います。産業用ロボットとはどういったものか?サプライチェーン、業界特有の課題などを整理していきたいと思います。

産業用ロボットとは?

 産業用ロボットとは、人間の代わりに、工場での組み立てなどの作業を行う機械装置を指します。なお、ここでの調査対象は、非工業向け、医療用や掃除用ロボットなどを除く、製造業の工場で組立や搬送などに使われる「産業用ロボット」とします。医療向けやサービスロボットも市場拡大が見込まれる分野なので調査を行いたいのですが、収拾がつかなくなりそうなので・・・。

産業ロボットの構成

 産業用ロボットがどのようなもので構成されているのかを見てみましょう。

安川電機HPより引用https://www.yaskawa.co.jp/product/robotics/about

 産業用ロボットは、複数の軸をモーターで動かすことで作業を行う「マニピュレータ」、マニピュレータを制御する「コントローラー」、マニピュレータに動作を教え(教示す)る「プログラミングペンダント」の3つで構成されています。さらにマニピュレータは駆動源であるサーボモーターや減速機、モーターの回転位置などを検出するエンコーダーなどの部品で構成されています。

サプライチェーン

 次に産業用ロボットのサプライチェーンを見ていきましょう。

 産業用ロボットのサプライチェーンで特徴的なのは、自動車メーカー以外の顧客に直接ロボットを売るケースは少なく、ロボットメーカーと顧客の間にシステムインテグレーター(Sler)が入ることです。このSIerとは何かというと、ロボットの導入を検討する企業の要望に応じて、最適なロボットシステムを構築するために、様々な機械装置や部品などから必要なものを選別し、システムとして統合する企業のことを言います。つまり、ほとんどの企業が単独で産業用ロボットを使用したライン構築ができないため、専門の業者に依頼しているということです。例外として自動車メーカーはライン構築のノウハウがあるところが多いため、ロボットメーカーから直接購入するケースが多いようです。

 投資を考えるならば、どのロボットメーカーがどの産業にロボットを販売しているか、その産業の設備投資額なども重要になりそうですね。また、多くのロボットメーカーに部品を提供している部品メーカーがあれば顧客の産業動向にあまり左右されずに成長してくかもしれませんね。

産業ロボット業界の課題

 日本の産業ロボット業界およびロボットメーカーの課題として、複数のメディアで大きく取り上げられているのは、自動車や電子・電気産業への依存度が高いことです。裏を返すと他の産業、特に食品や化粧品、医薬品などのいわるゆる「三品産業」への導入が進んでいないということです。産業用ロボットの導入が進んでいない産業のニーズを取り込めるメーカーが持続的な成長を実現できる可能性が高いと考えられます。

経済産業省 ロボットによる社会変革推進会議

 ではなぜ自動車や電子産業以外で産業用ロボットの導入が進まないのか?みずほ産業調査Vol66では技術的課題と経済的課題の2つが挙げられており、ロボットメーカーがとるべき戦略を解説しています。内容を要約してお伝えすると、

 まず技術的な課題として、コンシューマー向け製品では少量多品種で生産されている場合が多く、産業用ロボットを活用するには都度ティーチング必要になるという課題や、不定形で硬さも異なる物の取り扱いが難しいという課題があり導入が進んでいないようです。こういった課題に対して各メーカーでは画像認識技術やAI技術を開発して課題解決に取り組んでいますが、大量のデータセットが必要になったり、タクトタイムが遅いといった課題を抱えている状態です。

 次に経済的な課題として、産業用ロボットを活用したシステム構築コストが人件費に対して高くなってしまうという課題が挙げられます。本来、ロボット導入によるユーザーの経済的効果は、自動化による人件費削減だけでなく、省人化に伴う作業員の高付加価値業務へのシフトによる製品・サービス品質の向上、生産・オペレーションの繁閑への対応による逸失利益の低減、などの総合的な効果を考えなければなりません。しかし、これを実現するには単に特定の工程をロボットに置き換えるだけでなく、ユーザーの生産工程全体を把握して俯瞰的な視点で生産ライン構築・提案を行う必要があります。現状では、ロボットメーカーはユーザーの生産工程までは入り込んでおらず、SIerは食品やプラスチック・化学関連、物流、小売産業でのユースケースが少なく、ソリューション能力が育ったいないためシステム構築コストが回収しにくい状態となっているようです。

 食品やプラスチック・化学関連(医薬品や化粧品など)、物流、小売等のユーザー産業の自動化の開拓のためには、ロボットメーカー自らがユーザーのオペレーションに入り込み、ロボットのみならず周辺システム・機器含め提案する「システム提案型事業」を行うことが必要となります。ロボットメーカーがユーザーのオペレーションにおける課題解決を志向することによって、ロボット導入によるユーザーの経済的効果がシステム構築コストを上回ることができると考えられます。

みずほ産業調査Vol66

 こういった産業用ロボット業界の課題に対して明確な取り組みや技術開発をおこなっているかどうかは長期投資ではポイントとなりそうですね。

まとめ

 産業用ロボット業界の分析結果のまとめです。

  • 産業用ロボット業界のプレイヤー(投資先)は、①産業用ロボットメーカー、②サーボモーターや減速機、センサーなどを提供する部品メーカー、③ロボットを活用したライン構築を行うシステムインテグレータ(SIer)、の3つ。
  • 自動車メーカーを除き、エンドユーザーはロボットを使ったライン構築を独自でできず、SIerに依頼するケースが多い。どの産業をターゲットとしているかによって、ロボットの普及率や設備投資額が変わるのでエンドユーザーの産業動向に注意が必要。
  • 産業用ロボットメーカーの成長は食品やプラスチック・化学関連(医薬品や化粧品など)、物流、小売等の産業をどれだけ新規開拓できるかが焦点であり、課題。
  • 新規分野の開拓には、ターゲットとする産業特有の技術的課題を解決するだけにとどまらず、エンドユーザーの生産工程を把握した全体的なシステムの提案力が必要となる。

 

以上となります。今回は産業用ロボットの業界について調査してみました。業界を俯瞰的にみてみるだけでも投資のポイントとなりそうな部分が見えてきますね。ここから各メーカーのファンダメンタル分析や技術開発動向分析(特許情報分析)を行って有望銘柄の絞り込みを行っていこうと思います。

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